9月5日 

 やっと晴れた。でも現地の言伝え通り風が強い強い(椰子の木は真っ直ぐ立っているが)。
8時、ホテル横の棧橋より船でゲーム現場まで行く予定、朝食は棧橋で摂ってくれとの事、少し早目に行くことにする。朝食はクロワッサンとベーコン。フランス領らしく結構旨い。沖を見るとボートが一雙へさきだけを水面に出して沈んでいる。どうしたんだろう?そういえばさっきからスタッフがいやにばたついている。船もなかなか出ない。近くに入るスタッフに聞いてみる。
 「えっ、ウルトラのボートが沈んだ?」
 「怪我人は?」(一応医者らしい?)
 「いないみたい。」
良かった。良かった。とりあえず僕の出番はなさそうだ。先行き不安だけど.....

 9時 クイズ現場着。
 風はどんどん強くなる。リーフの中だというのにうねりまで出てきている。カタマランの(双胴の)小さなモーターボートで沖のブイにプロデユーサーのS氏をレッコする(ヨット用語で投込むこと)。泳ぎでは河童も凌ぐと豪語していたSちゃんがうねりと潮流のおかげでどんどんと流されて行った。慌ててドライバーに助けに行くように言おうと思ったが、なんせ受験英語の悲しさ、旨く言えない。第一、相手はほとんど英語の判らないフランス系の現地人だ。身振手振りで説明する。”ペラペラペラ.....?””助けに行けって行っているのが判らないのか。”思わず日本語で怒鳴ってしまう。やっとの事でドライバーも気付いたらしい。"Go, and pick up him?" "Yes, please." Sちゃんまだ生きているかしら?

 結局、クイズが始っても沖のブイまでたどり着いたカヌーは一雙もなかった。潮流と風で真っ直ぐ走れないのだ。カヌーの世界チャンピオンでもこの有様。本部にいるディレクターに連絡してみるが、トランシーバーも何故か役に立たない。ええい仕方がない。現場判断で中止にしよう。カヌーに引張られた敗者を一人ずつボートにピックアップする。 10年前のヨット部生活に戻った気分だ。 10年一昔というが、体力の衰えはそれ以上だ。一人船に引上げるだけで眩暈がする。タヒチまで来てなんでこんなことしてんだろう。
 やっとの事でゲーム終了、途端にトランシーバーが通じるようになった。
「何で、敗者がブイのところにいないんだよ。」
チーフディレクターの罵声が飛込んでくる。すみませんを連発する ADからテレコ(トランシーバーの事)を奪い取り思わず怒鳴ってしまう。
「ざけんじゃねえ。てめぇ、こっちに来て現場を見てみろ。」
言ってしまってから反省、きっと奴のところからは遠すぎてわかんないんだろうなあ。余裕がないのでどうしても怒鳴ってしまう。申し訳ないと思う。どうも年を取るに連れて短気になってしまう。嘗て北杜夫氏はドクトルマンボウ航海記の中で「悟りを開けば開くほど人間は怒りっぽくなる。」と書いた。僕の悟りが開けるものもうすぐ?
 すったもんだの揚げ句、レスキュー要員を増やして罰ゲームを行なうことになった。

 ブイに繋がれた敗者を勝者が見送り、敗者はそのまま流されて東京へという設定。暖かいので何とか大丈夫だろうと思っていたのが甘かった。風邪を引いていた敗者がおり、撮影終了後、鼻水ずるずる流してやってきたのだ。初めからそういっておいてよねえ。毛布と熱いシャワーを浴びさせるよう ADに言う。やれやれ敗者の方で良かった、こんなところで病気にでもなられたら後々大変だ。取り敢えず日本に帰れば病院に行ける、ここにある薬には限りが有り、しかもまだ後 30日近くも旅は残っている。冷たいようだが本人も風邪のまま旅を続けるのは辛いだろう。やばかったとおもいながらもほっと胸を撫で下ろす(ごめんね)。
 早押し機、ピンポンブーの調子が悪い。鳴りっぱなしになったりスイッチに反応しなかったりと非常にやばい。美術の連中は真っ青になる、留さんも珍しくかっか来ている。
 夕方、やっとの事で風がおさまり、あたりは今までが嘘のように静まり返っている。ホテルのプールで日光浴、まっくろくろ。さすがタヒチ。少しは腹がヘッ込んでみえるかも六本木でもてるためにもよーく焼いとかなくっちゃ(何を考えているんだろうね、この医者は)。
 プロデューサーのOちゃんが沈んだ船の事で相談にくる。話を聞いているとボートの持主が遅刻し、その助手が運転したのだが、そのときボートキングストンを閉め忘れたらしい。キングストンというのは船底にある栓のことで、船に貯まった水を陸に上げた時に抜く為のものだ。当然これを閉めずに走れば船は沈む。しかし相手は頑固なフランス人、どうしても自分たちの非を認めないらしい。おまけにフランス語しか話さないらしく、交渉は通訳を交えてで一向に話が前に進まないらしい。プロデューサーって大変だなあと思う。
 夕闇迫るカフェでよく冷えたバドワイザーを頂く、下戸の僕にも極楽極楽。その間、スタッフはクイズ part Uを撮っていました。御苦労様。
 ところでカフェのボーイ、レストランのボーイみんなオカマっぽい。どうしたわけか?
タヒチには古い言い伝えがあり、男の子が生れると海の神様が連れ去って行ってしまう為成人までは女の子として育てるとの事。それゆえ男の子はみんなしなを作って歩いている訳だ。なるほどそれで耳のところに花を差している人の絵の方が男子便所な訳なんだ。
 夕食は中華もどき、この地では旨かった。
 絵葉書を買おうとしたが売っていない。仕方がないので備え付けのを出す。宛先はナイショ、ナイショ。


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