第14チェックポイント フェゴ島


罰ゲームは自然のゆりかごで熟睡?!
トメさんのインタビューが終わり、勝者はバスで移動することに。最後までみんなを見送りたかった私は、涙をこぼさないように顔を引きつらせながら笑ってみた。葬式に参列するように、みんなの顔がうなだれていたように見えたのは気のせい? そして、バスは走り去って行った。何かが私の心の中で張り裂けた後は、不思議なくらい気持ちが落ち着いてきた。そしてやっぱり、気になるのは罰ゲーム。いったい、何をさせられるのだろう??? 勝者と敗者をキッチリ分けてしまうウルトラでは、敗者がどんな罰ゲームをしているのか知ることができない。だいたい、帰国後に連絡を取り合って確かめたり、放映を見て驚いたりする。私もそれまでの敗者がどこで何をしたのかわからないし、自分が何をすることになるのか皆目見当がつかなかった。ただ、「負けちゃったんだから、もう何でもいいや」という、ちょっと投げやりな気持ちもあった。焚き火にあたって暖をとっていたら、小倉さんが何かを手に持って走ってきた。トメさんがやさしく穏やかに、「罰ゲーム始めようか?」と切り出す。知らないうちにカメラが回っていた。聞けば、捕鯨のおぢさんたちが南氷洋で漁をしている時に、海に落ちても24時間はプカプカ浮いて救助が待てるように設計されている全身スーツらしい。顔だけがポッカリ出る形で、「暖かいよ」とトメさんは言う。小倉さんに手伝ってもらって、ゴソゴソ着てみた。180cmの人でも着られるようにできているから、すごくでっかい。歩いてみると、まるで月面歩行しているみたい。それでも何とか水辺までたどり着き、プッカリ浮きながら水をかいて沖へ出ようとした。ところが、満ち潮なのかすぐ浜に戻されてしまう。しかも、顔とスーツのすき間から水が入ってくる。いくら暖かくても、これは誤算だった。首筋からヒンヤリ冷えながら、何度も何度も沖に出てみては戻されて、それでもちょっと沖の方でプカプカ浮いてみた。すると、何だかプカプカ具合が気持ちいい。ウォーターベッドってこんな感じなんだろう。「それに、ちょっと浮かんでたら終わりだよね」・・・それは、甘い考えだった。しばらくすると、モーターボートのエンジン音が。「はーい、お疲れさん」という言葉とともに、ボートに引き上げられた。ちょっと物足りないかなー、なんて心の中で思っていたら、スタッフが無線で連絡を入れる声が聞こえてきた。「はい、今、回収(わしゃ、荷物か!)しました。はい、はい、わかりました。もっと沖の上手の方ですね」振り返ったスタッフがすまなそうに、「ごめんね。ロングの絵を撮るから、もう少し沖に行くね」「え?」聞き返す間もなく、沖に到着。「ごめんね、ごめんね」と、軽く突き落とされた。「うっそー?!」ボートはあっという間に走り去っていく。クイズをやっていた浜辺は、もうはるか遠く。スタッフの姿さえ、見つけられない。じたばたするのをやめて、仰向けで空を見上げてみた。どんよりした雲が、どこまでも広がっている。大きい大きい空と大きい大きい海の中に、プッカリと一人ぼっち。本当に私って、小さいんだなぁ。目を閉じてみると、波がユラユラとまるでゆりかごのように揺らしてくれる。そのまま、いろんなことを考えた。勝者のみんなは何をしているんだろう? 誰が優勝するんだろう? これからどこへ行ってしまうんだろう? 不思議なことに自分のことは、「あー、負けちゃったんだなー」くらいしか浮かばなかった。それほど、思いだけは先へ行こうとしていたのかもしれない。ユラユラ揺れていると、前夜の寝不足やクイズでの緊張がほどけて気持ちよさが広がっていく。 と、ボートのエンジン音で現実に戻った。どうやら、短時間だけどぐっすり眠ってしまったらしい。地球の大きい懐に抱かれるって、こういうことを言うんだね。いい体験しました。でも、罰ゲームで寝てたのって私くらいかも。
そして、私の本当の罰ゲーム、“日本まで2泊3日の旅”が始まるのだった。


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